JA11ジムニー(シングルカムF6Aターボ)の白煙対策としてバルブクリアランスの調整を行なっていきます
クリアランスが大幅に拡大すると燃焼室での混合気が適切に保たれず白煙、ブローバイの増加につながる場合があります
モクモクと明らかな白煙はバルブクリアランスの調整ではなくオイル上がり、下がり、タービン交換等の対策を行う必要がありますがわずかな白煙であれば調整で改善する可能性もあります
ですがバルブクリアランスが狂うほどの長期間、調整がなされていないのであればそもそもエンジン内部のカーボンの蓄積が多くなっていて、バルブ周辺の機能が十分に果たせていない可能性が大きいのでエンジン全体もしくはシリンダーヘッドのオーバーホールをおすすめします
下図はシリンダーヘッドのロッカーアーム、カムシャフト、バルブシャフト周辺を横から見た図です🔽
バルブクリアランス=上図のAの隙間を調整していきます
まずはインタークーラーの取り外し
インタークーラーの固定ボルトを3本外していくとインタークーラーが外れます
上の写真のフロント助手席側のボルトは手が届きにくいためロングソケットやフレキシブルエクステンションバーなどを駆使して外していきましょう
ヘッドカバーの取り外し
ヘッドカバー固定ボルト(4本)を外しカバーを上方へ引き上げればカパっと外れます
シリンダーヘッドの状態確認
全体的にカーボンが付着しておりエンジン内部の状態が心配になるレベルです
前オーナーまでのオイル管理が悪かったものと思われます
ただビスの緩みや部品の脱落などは見当たりません
初めは1番シリンダーの圧縮上死点に合わせる
まず初めに一番シリンダーを上死点に移動させることから始めます
まずボルト2本で止まっているデストリビューターのキャップを外しローターを露出させます
エンジン前側に移動しクランクシャフト固定ボルトにレンチをかけて回し、ディストリビューターのローターを1気筒目の点火位置に合わせます
ファンシュラウド(ラジエーターファン⦅下図の扇風機の羽のようなもの⦆の周囲を囲っているプラスチック部品)を外すことでクランクシャフト固定ボルトへのアクセスがよくなりますが、外さなくても可能です。手は傷だらけになりますが…
下図では見えにくいですが白いマーカーで1番シリンダーの点火点に印を書いています
ここにローター(T字の金属部分)の中心合わせると1番シリンダーの上死点がでます
確認するときは斜めから確認せずローター中心に対して正面から見るようにしてください
バルブクリアランスのお話とは少しずれますがこのローターと外したローターキャップが錆びたり、すり減って劣化していれば交換をおすすめします
劣化していれば点火タイミングのズレや点火できず不完全燃焼が起こりエンジンのパワーが適切にでないことがあります
せっかくのタイミングですから劣化していれば交換をおすすめします
もう一つの方法として同じようにクランクシャフト固定ボルトを回し下図を参考に圧縮上死点を出します
ここで注意しなければならないのはカムシャフトプーリーの外周切り欠きをタイミングベルトカバーの上方タイミングマークに合わせます
プーリー本体のスポークの『ぽっちり』にタイミングマークを合わせる方をたまに見かけますが外周切り欠きをタイミングマークに合わせるのが正解です
上図の状態を作れたら1番シリンダーの圧縮上死点が出た状態となります
ここからは以下の表を参照してクリアランスを調整していきます
ちなみに車体の前側(フロントバンパー側)から1番、2番、3番シリンダーとなります
実際のクリアランス調整
まずはロッカーアームのナットを緩めましょう
ここも固まったオイルやスラッジで固着している場合があるので慎重に緩めてください
緩んだらスクリューを左右に回し動きが渋くないかネジ部のつぶれがないか確認します
規定の隙間に対応するシクネスゲージを差し込みスクリューを微調整しながら長軸方向へ抜き差しし、わずかに抵抗があるくらいで止めます
下図を参照にしてちょうど良いクリアランスになればマイナスドライバーでスクリューを固定しながら、ナットを規定トルク(ロックナットの締め付けトルクは150~190kg・cm)で締めます
ここで注意していただきたいのはナットを締めた後にもクリアランスをもう一度確認してください
ナットを締めた際にスクリューも同時に周りクリアランスが狭くなって閉まっている場合があるので注意しましょう
狭くなっていたらもう一度ナットを緩め、再度トライしてください
次に1番シリンダーの排気上死点に合わせる
圧縮上死点で調整したのちクランクシャフトを一回転まわし、排気上死点で調整します
ここではローターで見てもいいですが、クランクを一回転したのち、上図の測定表を参考に、フリーになっているロッカーアームを上下に動かしクリアランスがあるかを確認します
以下がバルブクリアランスの適正値です
基本的には冷間時のクリアランスに合わせれば問題ありません
結果
1番 | 2番 | 3番 | ||
1番圧縮上死点 | IN | 0.20mm | 0.21mm | |
EX | 0.17mm | 0.19mm |
1番 | 2番 | 3番 | ||
1番排気上死点 | IN | 0.21mm | ||
EX | 0.20mm |
上のように規定値を外れているものもありましたが調整し、正常値に戻しました
ほんの少しですが白煙が薄くなったように思いますが、エンジンの暖まり具合や空気の流入具合などの環境が都度変わりますので正直改善したとは言いにく状況です
ですが、タペット音は多幅に小さくなりました
吹け上がりもスムーズになり、トルクが戻ってきたように思います
ぜひ皆さんも調整してみてください
最後にカバーを元に戻す際にはバルブカバーのパッキンとカバー固定ボルトパッキンを新品に交換しましょう
劣化したままのパッキンを再使用するとカバー接合面よりオイル漏れの原因となります
また新品を取り付ける前にはパーツクリーナーで接合面を綺麗に掃除しておきます
ガスケットが残ったままでも漏れの原因になりますのでこちらもスクレーパーとガスケットリムーバーで綺麗に剥がしていきます
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